最上階の女

夏休み、怪談第二弾。

 

 

荷揚げ屋のバイト君から聞いた話です。

 

その日、荷揚げ屋の社員さんはみんな地方に出張で出払っていて、

 

バイト君しかいなかったそうです。

 

それでその仕事がバイト君にまわってきたそうです。

 

どんな仕事かというと、

 

夜中に大阪市内のタワーマンションの最上階に資材を

運び込むという仕事だったらしいです。

 

それで実際にそこに行ってみると、

 

そのタワーマンションは新築ですでに完成しているのだけど、

 

最上階の一室だけが完全にスケルトン状態だったらしいです。

 

ちょっと変な感じが気になったそうですが、

 

仕事なんで、資材を運び込み始めました。

 

仕事自体は1時間くらいで終わったそうです。

 

それで終わってから、

言うてもタワーマンションの最上階ですから、

億単位の値段がするでしょう。

「こんなとこ一生住めんやろな」と思いながらベランダから

夜景を眺めていたそうです。

 

そしたら後ろでセメント袋を引きずるような音がしたから、

 

「社長来たんかな?」と後ろを振り返ったけど何もなかった。

 

その次の瞬間、背中がゾクゾクとして「後ろに誰かおる!?」って感じて、

 

内側に一歩踏み出しながらベランダの外を見ようとしたら、

 

左手の下の方から女の顔がぐわっととび出してきた。

 

 

そしてその女と目が合った瞬間「落とされる!」。

 

 

両手でバーンとその女を払いのけたそうです。

 

それで「あ"~」と叫びながら部屋を飛び出し、

 

内廊下の電灯の下に背中をつけて張り付いたそうです。

 

「あ"~、あ"~」と叫んでいると、

 

その部屋のドアがゆっくり開いてきて、

 

あの女、出てくる、出てくると思いながら「あ"~、あ"~」と叫んでいると、

 

バタンと大きな音をたててドアが閉まり、

 

その瞬間「うっ」となったら今度は声が出なくなったそうです。

 

声は出なくなったけど意識はどんどんハッキリしてきて動けない。

 

結局、朝になっても帰ってこないバイト君にぶちぎれた社長が

やって来るまで動けなかったそうです。