蛾女・・・

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夏休み 怪談第三弾

 

 

この話はちょっと古い話なんですが友人から聞いた話です。

 

その友人は車の免許を取ったので、

 

夜中に家のクルマを使って練習していたそうです。

 

クルマはハイエースのバンで、

 

クラッチ操作のいるミッション付きでした。

 

そのときは坂道かどうかわからないゆるい傾斜の坂でも

エンストしてしまうような初心者だったのに、

 

何を思ったか五月山ドライブウェイの展望台へ

行ってみようと思ったそうです。

 

それでもエンストすることもなく展望台に

つくことができたそうです。

 

平日の夜中だったそうですが、

 

他には一台だけ夜景を見に来ていたそうです。

 

それでクルマから下りて夜景を見たんだけど、

「オトコ一人で来るようなとこやないな」

と思ってすぐにクルマに戻ったそうです。

 

そしたらフロントガラスの内側にどっから入ったかわからないけど、

 

大きな蛾が張りついていたそうです。

 

「気持ち悪いなぁ」と思いながらも対決するしかないので、

 

後部の荷台から古新聞を出してきて、

 

それを手に持って蛾に向かってバーン、グシャグシャ。

 

車外に丸めて踏みつけ捨てたそうです。

 

「あ~気持ち悪」と思いながらクルマをバックさせ、

 

展望台を出ました。

 

右に曲がれば帰る。でも、そのときはまだ時間があったので

左に曲がってみることにしたそうです。

 

最初は街灯もあり快適に走っていたそうなのですが、

 

だんだん道の上に木がおおいかぶさってきて暗くなり、

 

落ち葉の上をカサカサ音を立てながら走る嫌な雰囲気に

なってきたそうです。

 

それでも道なりに走っていると分かれ道になりました。

 

「さて、どっちに行ったものか」と車を止めて、

 

シートベルトをはずして助手席の窓から道を確認していたそうです。

 

そうすると突然ガサガサという音と共に目を見開いた恐ろしい形相の女が

フロントガラスに張りつきました。

 

びっくりして固まっているとその友人の方へその女がまわりこんできたので、

 

慌ててベンチシートを運転席の方へと逃げたそうです。

 

最初は恐怖のあまり何もできなくなっていたそうですが、

 

だんだんと時間がたつにつれ、

 

その女が「助けてください! 助けてください!」

と叫んでるのに気づいたそうです。

 

それでおそるおそる「なんですか?」って聞いたら、

 

男とドライブに来たらその男に襲われそうになって

逃げて隠れていたそうです。

 

それで下まで乗せていってくれないか、ということだったらしいです。

 

でも、これって怪談話でよくあるヤツやんと思って

ことわりたかったんだけど、

 

道はどっちを選んでも先はどうなってるかわからないし、

 

この場所でスピンターンを決めてこの場から逃げるようなテクニックもないし、

 

仕方なくその女をのせて下に下りることにしたそうです。

 

道中ひと言もかわすことなく、

 

「気持ち悪いな、気持ち悪いな」と思いながら運転していたそうです。

 

そうしてようやく下の方まで下りてきたときに、

 

「ここでいいです」とその女が言ったらしいのです。

 

そこは神社らしいとこで街灯はついているのですが、

 

人気がまったくなく、

 

「こんなとこでええの」と思うようなとこだったらしいです。

 

それでも「降りてくれるんならそれでええわ」と思って、

 

クルマを止めたそうです。

 

その女がドアを開け、クルマを降りて、

 

「ありがとうございました」とこちらを向いて言ったその瞬間、

 

その女が着ていたセーターがさっき殺した蛾と同じ柄なのが目に飛び込んできて、

 

「あ~っ」と声に出しそうだったそうです。

 

「あああああっ」って思っているとその女は

 

その神社の暗闇に消えていったそうです。